hassanのお出かけメモ
hassanのお出かけメモでは、数少ないhassan一家のお出かけのときに見聞きしたことや、もしかしたら皆さんのお役に立つかもしれない情報を、hassan父とhassan母が気まぐれに書き留めています。お出かけの参考になればうれしいです。
68. 大阪府立弥生文化博物館ワークショップ アート魚拓
大阪府和泉市にある大阪府立弥生文化博物館では、2012年6月2日(土)~8月5日(日)の期間、平成24年度春季企画展II「アート魚拓の世界 -松永正津と拓正会会員 作品展-」が開催されています。この企画展にすばらしいアート魚拓作品を出品されておられる拓正会は、大阪に本部を置く全国規模の団体で、アート魚拓創作活動を展開されています。2012年6月16日(土)、この企画展の関連ワークショップ「体験 レッツ・アート魚拓!!」が開催され、この体験教室に事前参加申し込みをしたhassan長男に付き添って、hassan一家全員で参加してきました。
魚拓というと、釣果の魚に黒い墨をべったり塗って、荒々しく大胆に拓本をとるワイルドなイメージですが、今回体験するアート魚拓はかなりちがうものです。拓本には間接法と直接法があります。石造物や金属器・瓦・土器・古銭など、考古資料・美術品の文化財の拓影を製作する場合は、間接法で拓本を採ります。表面の凹凸に和紙をしっかりと密着させてから、タンポで墨を入れていくので、間接法による採拓では、対象物を汚す心配が少なく、多くの場合はこの方法が適切とされます。ですが、対象物がやわらかい生きもののおサカナだと、和紙を表面に密着固定させることがむつかしいので、魚拓の場合は、直接法で拓本を採ることが多いそうです。
ワークショップ会場へ入る前に、2階の特別展示室で、拓正会のかたがたの魚拓作品を鑑賞しました。魚の姿かたちと色彩をみごとに映し出し、いまにも動き出しそうな躍動感あふれたすばらしい作品は、まちがいなく写真撮影による記録よりも写実的です。

完璧にセッティングされ、墨入れを待つ鯛
ワークショップ会場へ入ると、拓正会のみなさんがあたたかく迎えてくださいました。参加者各自の机の上には、アート魚拓の作業に最適な状態にセッティングされた鯛が用意されていました。頭の先、背びれ、尾びれの下には紙粘土を敷いて、作業中も鯛が動かないよう、拓本を採りやすいよう手配いただいていました。また、ワタや血も抜いて、要所要所に紙などの詰め物も施してくださっています。

アート魚拓製作に必要な道具類

アート魚拓に用いるアクリル絵の具
墨一色の魚拓とは違い、アート魚拓ではいろんな色で魚を塗り分けて、美しい拓影の完成を目指します。できあがった拓影をみると美しい日本画のような趣で、まるで採拓後に筆入れをしたように見えますが、実際は目玉の部分以外は一切の加筆・修正を加えない、本当の「魚拓」なんです。ですので、魚に色を塗っていく作業は、気を緩めることができない真剣勝負です。

精神を集中させて鯛に色を塗っていきます.
ワークショップの講師の先生は、拓正会会長の松永正津さん。とても親しみやすく暖かな口調でお話しを頂戴しました。そして、参加者1人1人に拓正会会員のかたがマンツーマンでやさしく指導くださったので、とてもわかりやすく、アート魚拓について楽しく実践学習することができました。
魚拓はふつう、仕上がり時に魚の頭が左になるように製作します。このため、魚に絵の具を塗るときは、鯛の頭が右にくるようにセッティングされていました。絵の具の塗りかたにもポイントがあります。魚の背中近くを口唇部から背びれ付け根ぐらいまで濃い色で塗り、その下側を中ぐらいの濃さで帯状に塗って、おなかのあたりを薄い色で塗るのが基本的な塗りかただそうです。背びれは付け根側を濃く、先端側を薄く、胸びれ・腹びれ・尻びれ・尾びれは付け根側を薄く、先端側を濃く塗ると雰囲気が出るようです。また、魚の本来の色に合わせて配色し、グラディエーションをうまくかけると、写実的で立体的なアート魚拓に近づくようです。
また、あまりゆっくり作業をすると、絵の具が乾いてしまい、うまく転写できなくなってしまうので、丁寧にそこそこ手早く大胆に作業する必要があるそうです。この日は朝から雨が土砂降りで湿度が高く、絵の具がなかなか乾きにくいので、絶好のアート魚拓日和でした。

仕上げ段階の着色にかかる長男と見守る次男
中間色を配色して筆で丁寧に塗っていくと、飴細工のような色合いの鯛になってきました。もうひとつの着色のコツは、白色の部位を単なるホワイトだけで塗らないこと。輪郭線に近いところや、口元などには、青や茶などの色をわずかに混ぜて塗ることで、拓影が背景の和紙の色から引き立って淡色の部位も存在感が増すそうです。
目玉の周りにちょっと印象的な色合いの絵の具を着色して、いよいよ採拓作業です。ほんのわずかに霧を吹いた和紙を鯛の上にさっと敷き、和紙が動かないように気をつけながら、指先や手のひらなどを駆使して、鯛の体の表面に和紙を密着させていきます。

ヤマ場の採拓作業。拓正会のかたにしっかりサポートいただきました.
手早く、ですがきっちりとヒレやウロコの部位も圧着していき、できるだけぴったりと和紙が密着するようにがんばります。

指先で和紙を魚にしっかり密着させていきます.
精神を集中させて和紙をはがすと、色鮮やかな鯛の拓影が現れました。「まだ戻せるで。どうやいけるか?」「うん大丈夫」拓正会のかたのご指導がすばらしいので、一発で満足のいく拓影を転写できたようです。

和紙をめくって拓本のできばえをみる長男と次男
一度に拓本をとることができない腹びれの部分は、鯛のお腹から切り離して彩色したのち、拓影の上に置いて圧着し、追加で採拓します。最後に、目玉の部分に加筆して、魚の表情を決定します。面相筆の微妙な使いかた、色ののせかたで、鯛の表情はまったく変わってきます。
鯛のアート魚拓作品が完成し、作品を手にした参加者全員とご指導頂いた拓正会のみなさんとで記念写真を撮影しました。わずか2時間でこれだけの作品を子どもだけで製作できるはずもなく、拓正会のかたの的確なご指導のおかげで、楽しく美しい魚拓をゲットすることができ、hassan長男は大満足のようすでした。博物館スタッフの皆さん、拓正会の皆さん、本当にありがとうございました。今回の参加対象学年は小学校3年生以上とアナウンスされていたので次男は申し込みしなかったのですが、保護者付き添いであれば2年生以下でも参加できたとあとで判明。興味津々で懸命に見学していた次男にも、機会があればぜひ一度、アート魚拓を体験させてみたいと思います。
※このページでご紹介している情報は2012年6月23日現在までに、hassanが個人的に見聞きしたことを取りまとめたものです。ご利用になるかた各人の責任においてご活用下さい。