262 re(3):須恵器の編年について教えてください |
はじめまして。古墳時代の須恵器の勉強をしているのですが、人にモノを教える程知識を持っている訳でもありませんが、最近気になった事を参考までに。
mika> 埼玉県を中心とした須恵器生産と流通をテーマに。と、いう事は中村浩「古墳時代須恵器の生産と流通」雄山閣1999に目を通されたのでしょうか?
@の問題は田辺昭三氏の編年か、中村浩氏の編年かという意味が言外に込められている様に思えますが、有力な説というのが、「有力な学閥の説」というのではなくて、公正さを尊重した、という意味「説得力を有する説」という意味であるならば、こちらの喫茶室で取上げられた様に田辺編年には様々な欠陥があります。
※かといってそれが中村編年に説得力を持たせるモノなのか、という問いに答えてくれた文章を見た事がありません。
こちらの喫茶室で、研究の最前線はすごいなぁ、と須恵器について眺めていたら、一般書でも、鈴木靖民編「日本の時代史2倭国と東アジア」吉川弘文館2002において、新納泉氏がTK四三型式を「陶邑古窯址群T」で提示された資料が、実際にTK四三号窯から出土した資料を代表するものではない(P.164)、と書かれており、中村浩「和泉陶邑窯出土須恵器の型式編年」(株)芙蓉堂出版2001
においてもTK43型式、TK217型式(については略します。)のそれぞれの問題点とともに、長期間にわたって使用された窯と短期間しか使用されなかった窯を一緒に扱って、同じ編年で扱うのは問題がある、としています。
しかし、一般に普及した田辺編年に基づく、近年の各遺跡との相対年代、絶対年代の確認作業の事例は、中村氏の著作には掲載されていません。埼玉では稲荷山古墳の編年観への異論、関西では、九州の岩戸山古墳の出土須恵器編年よりも説得力のある今城塚古墳(継体陵)の編年(新池遺跡)、そして年輪年代法による近年の成果(「考古学と暦年代」ミネルヴァ書房2003)。いずれも中村編年を用いていませんが、私個人としてはこのまま田辺編年の中に埋もれていくのは惜しい気がしてなりません。
それにしても、「須恵器大成」にせよ「和泉陶邑窯出土須恵器の型式編年」にせよ、「陶邑古窯址群T」と「和泉陶邑窯の研究」柏書房がないと編年作業が難しくてしょうがありあません。須恵器大成を見ると、関東での須恵器生産はTK23頃に遡るとありますが、陶邑古窯址群TのTK23窯出土の蓋杯の例は一部にTK208との「差異がほとんど認められない」ものがあり、中村編年では前段階(T型式3段階)に含まれる様に思われます。このような事などからすれば純粋に器形(型式)の変遷を比較する際には中村編年が、他の資料との情報互換性を重視すれば田辺編年が、それぞれ適しているといえるのかもしれません。
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