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覚書7 おすすめ!! 電派考古学少年

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●なべの会にて

「なべの会」というプライベートな研究会に大学1回のときから参加し続けている。奈良県某市町村で発掘調査に参加していた人々が中心となって当初4〜5名程度で会を発足し、徐々に参加メンバーを増やしてきた。学生さんが大学を卒業して遠方へ就職したり、なんやかんやでメンバーが入れ替わりつつ、現在は10名前後の人数である。某技師宅にて毎月1回程度開催し、1人ずつ順番に発表しているので、会員が12名いれば1年に1回は発表の機会がまわってくることになる。この発表の機会を適度に循環させるためと、物理的な要因その他もろもろの理由から、会を不必要に大きくしないようにある一定数以上のメンバーは募らないことにしてきた。比較的気心の知れた仲間内でメンバーを構成しているため、自分の研究途上の内容を発表し合い、みんなから不備な点を叩いてもらうことができる。各々の研究を深化・熟成するのに適した研究会である。

鍋をつつきながら勉強する楽しさもあって、なべの会はかなり長いこと続いている。先日、僕が発表したのが第125回だったので、ほぼ月1回ペースで開いてきたと勘定すれば、もう10年以上続いている計算だ。え〜っと、僕が大学1回生で19歳だったときに1桁台の開催回数だったし、今●●歳だから・・・●●-19で・・・ああ、10周年をかなり上回ってた。:-P
発表内容はたいていの場合、考古学に関する研究成果だが、書評や考古学以外の分野の発表も認められている(この取り決めが、この会が長期間継続している秘訣かもしれない)。で、今回の僕の発表標題は「発掘調査報告書デジタルデータ化のすすめ」とした。手抜きの発表と思われたかも知れないが、けして手抜きではない。君の考古学研究はどうなっているんだ!と言われようが、断じて考古学を忘れたわけではない。単に頭が考古学よりもコンピューター・インターネットのほうにどっぷり漬かってしまって、考古学の本を買うはずの小遣いでコンピューター関連の本を無意識に購入したり、自分でも何をやってるのかわからん泥沼状態に陥っているだけだ(自虐的大笑い)。

今回の発表では、発掘調査報告書やその他考古学関連文献をデジタルデータ化することの利点を述べ、それらをデジタルデータ化する際の段取りを簡潔に解説した。解説した項目は次のとおり。
(※Digital Archaeology Resources in Japanにある考古学関連データのデジタル化に関する詳細な解説文がとても参考になった。)

僕の愛用しているノートパソコン Let's note AL-N2T520J5と、会場である某技師宅にあるデスクトップパソコンのモニターをつないで、実際の動作を実演しながら解説したので、PDFやHTMLにあまり馴染みのない人にもよく理解してもらえたと思う(たぶん)。
参加者のかたの意見は、「印刷本を手にしたほうが何が載ってるかわかりやすい」「デジタルデータを検索して目的の情報へ簡単に辿り着いてしまうと、従来式の検索方法ではその過程で得られた目的外の情報や検索に伴う思索がなくなってしまう」「このあいだ販売されたCD-ROM版の某書は掲載内容がしょーもなかった」というものだった。やっぱり、僕も原本を手にしたいという欲求は否めないし、刊行する側にしても当分の間は印刷本の報告書を同時に刊行する必要があろう。あーでもないこーでもないと書庫で印刷本の頁をめくりながら考えを巡らせるのも非常に大事だ。
考古学関連の各種情報をデジタルデータ化することによって検索性が大幅に向上し、効率的でかつ公平に開かれた研究の土台となりうることは、参加者の多くの共通認識だった。参加者の情報によれば、市町村が刊行する発掘調査報告書にデジタルデータを収録したCD-ROMを添付する動きも活発化しているようだ。今後は印刷本の報告書とCD-ROMをセットで刊行する例がかなり増加していくだろう。
そうなれば、次の段階へすすむのも時間の問題だろう。自治体や大学や図書館などのWebサーバ上にPDFファイルやHTMLファイルの発掘調査報告書が登録され、誰でも自由に好きなときに必要なだけ閲覧できるようになるのだ。国民共有の財産である遺跡を破壊し、その代償として獲得された考古学データを、数百〜数千程度の配布先にて保存するだけでなく、広く社会に公開して国民が共有できるデータとして保存されることは、まことに理にかなっている。発掘調査報告書を作成するときに、容易かつ安価にデジタルデータ化が可能で、各自治体のWebサーバ等に容量が確保できるならば、ぜひとも発掘調査報告書のデジタルデータ化とその公開を検討するべきである。

発掘調査報告書や現地説明会資料、雑誌や紀要に収録されている研究論文、その他もろもろの考古学データすべてが自宅や出先に居ながらにしてオンラインで閲覧可能になるとどうなるか。

良いことずくめのように思える。必要な印刷本の書籍だけを絞り込んで購入すれば良いのだ。従来、検索に伴って得られていた発想や思索も、研究者個人の能力次第でどうにでもなるだろう。結局、素晴らしい研究ができるかどうかは本人次第なのだから、資料検索能力の勝負じゃなくて、その資料をどう料理するかの正味の勝負をできるほうが良いに違いない。
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●おすすめ!! 電派考古学青年

次の一文は、考古学関連データのデジタル化・オンライン化が完全に完了した何年後〜何十年後かのある考古学徒(関西在住の大学4回生)の電子野帳になぜか関西弁会話調で記された日記の抜粋である。(嘘)

20X1年06月30日
朝起きて、NET端末の[講義予定一覧]をみる。4講目の「考古学演習」だけ、オフライン講義のマークが点滅しとった。1講目の「国史学特殊講義」は自宅でまじめにオンライン受講したろか。2講目と3講目は例の自動応答ツールを使ってオンライン出席したことにしとこ。その時間は、NET端末で卒論のデータ検索でもしとったらええわ。
日本好古学協会が管理してはる[考古学研究資料検索システム]で「f字形鏡板付轡 | 近畿地方 | 報告書」って検索かけたら50件のデータが見つかった。ファイルサイズは全部たして約1.5GBくらいか。要るか要らんかわからへんけど、とりあえずダウンロードしとこ。数分くらいでダウンロードできるし。オンラインで見たらええやんっていわはる人も多いけど、やっぱり手元に保存しときたいねん。画面上の[バーチャル書庫]に並べときたいしなぁ。
次に「ハミエダ轡 | 報告書」て検索した。ほとんどもう持ってるけど、この「●●古墳発掘調査概要」ってのはもってへんなぁ。ありゃ、これはCD-ROM版しか発行されてへんやん。うちの大学の図書館に収蔵されてるかな。図書館の[蔵書検索]で調べてみよか。ええっと、ああ、あった。ほんならこの貸出フォームに学籍番号書いて・・・よっしゃ。4講目出る前に図書館に行って受け取ってこよ。久しぶりやなぁ〜、図書館行くのも。
20X1年07月01日
きょうは夏休みに行く発掘調査のバイトでも探そかな。寧楽県のほうの古墳でもちょっと掘らしてもらいたいな。NET端末で寧楽県の教育委員会のサイトに、市町村ごとの発掘調査予定一覧が載ってたな、たしか。おーおーぎょうさん掘りよるわ。土取りで壊れかけてる古墳がまだまだ多いねんなぁ。ええっと、調査補助員の非常勤職員募集してるとこは・・・、よっしゃ、この現場行こか。ほんなら、ここクリックして、履歴書フォームに記入して、マイクソソフトの[NetMissing 20xx]を起動して。応答待ちやな。
お、呼び出し音が鳴った。「はいはい、ぼくです」あ、向こうの顔が映った。この人がここの技師さんか。
技師「えー、●●市教育委員会の●田です。きみやね。うちの現場で働きたいっちゅうのは」
ぼく「ええ、是非お願いします」
技師「ほんなら、さっそく明日からでも来てもらおか。現場への道順は・・えっと、この画像みてもうたらわかるかな」
ぼく「画像確認しました。ですが、まだ明日も学校あるんですが・・・わかりました。行きます」
技師「ええっと、きみ測量機器は使えるんやろね」
ぼく「はい。とりあえずは新式のレーザー測量機器ならば」
技師「いや、ウチには1970年代に購入した旧式のトランシットとか、紙に書き込む平板とかしかないよ。できるかなぁ」
ぼく「教えてもろたら何とかできる思います」
技師「ほんなら、ウチが今までに掘ったこの古墳群の報告書一応読んどいてな。http://www.city.XXXX.jp/bunkazai/book/ にアップしてるさかい」
ぼく「わかりました。では、よろしくお願いします」
20X1年12月01日
20世紀末葉から長いこと続いてる不景気のせいで、今年も就職難やから結局どこにも就職でけそうにないな。各自治体のWebサイトを片っ端から検索して埋蔵文化財担当者を募集してるとこ探して、マイクソソフトの[Net Missing 20xx]で、いっぱいオンライン採用試験受けたけどひとつも合格せんかったわ。あのソフトはNET端末のリソース食い過ぎて動作が重いから、ときどきフリーズしよったし、そのせいかもしらんわ。
さー、卒業論文の註記でも、もういっぺん整理しとこかな。提出するHTMLファイルの文献註には、報告書ファイルやら論文ファイルへのリンク処理をきっちりしとかなあかんから大変や。細かいこと気にしはる教授は、全部クリックして出典を読まはるらしいから手抜きでけへんわ。原稿用紙を手渡しで卒論提出してた20世紀末葉頃やったら、先行研究とこの論文の読み比べも簡単に出来へんかったんやろけど、いまはクリックひとつで誰でも完全に比較チェックできるから怖いもんや。ほんまに卒業できるんかいな。
20X2年04月30日
就職はあきらめてたけど、捨てる神さんもおったら拾うてくれはる神さんもおるもんや。NET端末で就職先探すのやめて、あっちこっちの教育委員会に電話かけまくったら、ここの市で埋蔵文化財担当者のオフライン採用試験があることわかったんやもんなー。ほんまに今どき珍しい自治体やわ。Webサイトに職員の募集公告を掲示せーへんかったら、今の学生だれも気ぃつかへんで。ほんま。まぁおかげで、競争相手ほとんどおらへんかったから、ぼくが採用されたんやろうけど。
そういうわけで、いま、●●市教育委員会文化財保護課でノート型NET端末の前に座って、埋蔵文化財の発掘届とか受け付ける係をやってますねん。不況やのに不思議と開発件数は減らへんもんらしい。あ、マイクソソフトの[Net Missing 20xx]の呼び出し音が鳴ってるわ。こんな不安定な通信ツールを業務用につこうてたらアカンで。
どうやら開発業者さんからの問い合わせみたいや。
ぼく「はい。●●市教育委員会文化財保護課です」
業者「▲▲開発や。こんどxx1丁目0000番地にでっかいマンション建てよ思うてんねんけど、ここは埋蔵文化財包蔵地の範囲に入ってんのか?」
ぼく「ええ。いま画面に表示しました遺跡地図をご覧いただいておわかりになりますように、●●遺跡の範囲内になります」
業者「せやけど、ここは前にあんたらが発掘調査しとったから、発掘届とか出さんでええやろ」
ぼく「いえ、以前に実施した調査は、いまディスプレイに表示しております発掘調査一覧データの図面のように、以前に実施しました調査では地表下30cmまでしか土層断面を確認しておりませんので、基礎掘削の深さがそれ以上になりますと、改めて事前に発掘調査をしていただく必要があります。ですので、発掘届も提出願います」
業者「ええ加減なこと言うなや。あんたらが市のWebサイトに載せとるXX遺跡発掘調査報告書 http://www.city.xxx.jp/bunkazai/book/xxiseki.pdf の図面みたら、今回の開発予定区域内の全域で2m下の地山面まで完掘しとるやないか! 」
ぼく「ありゃりゃ・・・。(^^;」

この日記の抜粋を読むかぎり、考古学関連データのデジタル化・オンライン化が完全に完了した世の中は、かなり怖そうだ。国民が共有できるデータとして保存されるというのは、こういうことなのかもしれない。(^^;ゞ

※上記の架空日誌にて記述されている内容、組織・人物・遺跡等はすべて架空であり、もし実在の組織・人物・遺跡等と表記・読みが近似していたとしても、まったく無関係です。

(1999年11月26日)
おがみ大五郎


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