狭山池 埋蔵文化財編page43 [第3章]
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第2節 池尻遺跡(1)・狭山池ボーリングの珪藻・花粉分析

川崎地質株式会社 担当者 渡邉正巳

[はじめに][試料について][分析方法][分析結果][考察][まとめ]

1 はじめに

狭山池は大阪府中部に位置する大阪狭山市に位置する。また池尻遺跡(1)は狭山池堤下流部に位置する遺跡である。今回の報告では、発掘調査に伴って露出した地層より採取した試料と、狭山池内でのボーリング試料を対象として珪藻分析・花粉分析を行い、狭山池周辺での古環境復元などを行った。

図287 試料採取地点, 図288 池尻遺跡(1)地点の珪藻ダイアグラム, 図289 池尻遺跡(1)No.1地点の珪藻総合ダイアグラム, 図290 池尻遺跡(1)No.2地点の珪藻ダイアグラム, 図291 池尻遺跡(1)No.2地点の珪藻総合ダイアグラム, 図292 池尻遺跡(1)No.3地点の珪藻ダイアグラム, 図293 池尻遺跡(1)No.3地点の珪藻総合ダイアグラム, 図294 狭山池ボーリングNo.2の珪藻ダイアグラム, 図295 狭山池ボーリングNo.2の珪藻総合ダイアグラム, 図296 狭山池ボーリングNo.2の花粉ダイアグラムij1sikkf.pdf (PDFファイル 2.06MB)

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2 試料について

今回分析した試料のうち池尻遺跡(1)の3地点(図287)22試料については、川崎地質株式会社が分取した。それぞれの地点の柱状図および試料採取層凖は図288〜296のダイアグラムに示す通りである。

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3 分析方法

珪藻分析、花粉分析は、それぞれ渡辺(1995a1995b)に従い行った。

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4 分析結果
(1)珪藻分析結果

分析結果を図288〜295の珪藻ダイアグラム、珪藻総合ダイアグラムに示す。珪藻ダイアグラム、珪藻総合ダイアグラムは計数した珪藻化石の総数を基数にし、百分率で表した。珪藻含有量が少なく、珪藻検出数が50に満たなかった試料については、検出できた花粉化石の種類のみを※で示した。

(2)花粉分析結果

分析結果を図296の花粉ダイアグラムに示す。花粉ダイアグラムは計数した木本花粉を基数にし、百分率で表した。花粉含有量が少なく、木本花粉検出数が100に満たなかった試料については、検出できた花粉化石の種類のみを※で示した。

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5 考察
[珪藻分帯][花粉分帯][堆積環境][環境変遷]

(1)珪藻分帯

No.1、2地点では珪藻化石の検出量が少なかったため、珪藻分帯を行わなかった。No.3、4地点(ボーリングNo.2)について、珪藻分析結果をもとに珪藻分帯を行った。

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(2)花粉分帯

花粉分析結果をもとに花粉分帯を行った。

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(3)堆積環境

珪藻分析結果および珪藻分帯をもとに、1〜3地点での堆積環境を推定した。No.4地点に付いては「(4)環境変遷」で花粉分析結果および花粉分帯を踏まえて述べる。

(No.1地点)
全ての試料から海産〜汽水産種が検出されるが、試料の採取状況から海での堆積であるとは考えられない。このことから、これらの珪藻化石は再堆積による二次化石であると考えられる。全ての試料で、Cymbella cuspidata などの底生種が優占することから、浅い沼や湿地での堆積が推定できる。

(No.2地点)
No.1地点同様、海産〜汽水産種が検出される。特に試料No.3では海産〜汽水産種の検出率が高いが、試料の採取状況から海での堆積であるとは考えられない。このことから、これらの珪藻化石は再堆積による二次化石であると考えられる。試料No.3では淡水種の浮遊種が優占し、やや水深のある環境が考えられる。しかし後述のように浮遊種の検出量の関係から、浮遊種にも二次化石の可能性がある。試料No.5では底生種が優占し、浅い沼や湿地での堆積が推定できる。

(No.3地点)
3-I、III、IV帯では、海産〜汽水産種が優占する傾向にある。しかし、No.1、2地点同様に、試料の採取状況から海域での堆積であるとは考えられない。また海産〜汽水産種が優占する試料では、淡水の中で浮遊種が優占する傾向がある。このことは他の3地点にも当てはまり、海産〜汽水産種と同様に浮遊種にも二次堆積の可能性がある。

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(4)環境変遷

No.4地点(ボーリングNo.2)について、珪藻・花粉分析結果から古環境を推定する。


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6 まとめ

今回行った珪藻分析・花粉分析から以下のことが明らかになった。特に狭山池周辺の環境変化を推定するためには、池内部でのボーリング試料を対象とした花粉分析が有効であることが、No.4地点の分析から明らかになった。

  1. 珪藻分析結果からNo.3地点では3-I〜VIIIの8珪藻帯に、No.4地点では4-I〜IVの4珪藻帯に分帯できた。
  2. 花粉分析結果からNo.4地点ではP-I〜IIIの3花粉帯に分帯できた。
  3. No.1、2地点での堆積環境、No.3地点での堆積環境変遷が推定できた。
  4. No.4地点での環境変遷が推定できた。
  5. No.4地点試料No.5、6層凖は氷期の堆積物であると考えられたが、年代は推定できなかった。
  6. No.4地点P-II帯の内、下部の試料No.3の層凖は5世紀以降、上部の試料No.4の層凖は16世紀以降の堆積であると推定できた。
  7. No.4地点試料No.1、2の層凖は近代以降の堆積であると推定できた。
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参考文献
1)古谷正和「大阪周辺地域におけるウルム氷期以降の森林植生変遷」(『第四紀研究』18121-141,1979)
2)藤田憲司古谷正和渡邉正巳「大阪府南部地域におけるアブラナ科花粉の高出現率期について」(『日本文化財科学会第8回大会研究発表要旨集』33-34,1991)
3)中村純「イネ科花粉について、とくにイネ(Oryza sativa)を中心として」(『第四紀研究』13187-197,1974)
4)西田一彦「狭山池内堆積土の物理・力学的性質」(『狭山池調査事務所平成3年度調査報告書』72-84,1992)
5)武部善人『河内木綿史』p.275,吉川弘文館,1981
6)渡邉正巳「40・珪藻分析方法」(『考古学ライブラリー65 考古資料分析方法』86-87,ニュー・サイエンス社,1995a)
7)渡邉正巳「40・花粉分析方法」(『考古学ライブラリー65 考古資料分析方法』84-85,ニュー・サイエンス社,1995b)
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※当文書は狭山池調査事務所が編集・刊行した発掘調査報告書『狭山池 埋蔵文化財編』(1998年3月31日発行)をHTMLファイル化したものである。
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南河内考古学研究所