『情報 祭祀考古』第16・17号合併号(2000年3月31日、祭祀考古学会発行)所収
日本考古学研究におけるオンライン化の動向(前編)
狭山池ダム資料館(仮称)開設準備室 植田隆司
1.はじめに
コンピューターが一般家庭の中へ浸透し、数年ほど前からインターネット接続環境が整備され始めたことにより、かつては研究機関等に所属する一部の人達しか参加できなかったネット社会が広く一般に開放されつつある。異論もあろうが、各種オペレーティングシステムが比較的扱いやすい操作手順を売り物に大量販売されたため、パーソナルコンピューターに触れることすら逡巡してきた人々を導き寄せ、その先に用意された新しいコミュニケーションシステムへといざなっていることは結果として間違いない。
考古学および人文歴史系の研究者は他の学術分野と比較して、Webや電子メール等を研究に活用しはじめたのが遅かったような感がある。これは、他分野に較べて研究室外の研究者の数が多く、この多数の研究者がインターネットを十分に活用できる環境にいなかったためと考えられよう。しかしながら、パソコンの普及・アクセス環境の改善が1996年頃より進み、考古学研究者がインターネットに接続する機会が増えてきている。Webページの閲覧、電子メールによる情報交換等によって、個々の研究活動に利する情報獲得を行い得る状況となってきており、たいへん望ましい。多くの人がインターネットにアクセスすればするほど、コミュニケーション手段としてインターネットが有効なものになっていくのは、世間においても特定分野の研究者間においても同様である。そうした傾向が進めば進むほど、各所の閉鎖的な保管場所に蓄積されている関連データベース等も、デジタル化を経てネット上で公開する必要があると多くの人が認めるであろう。
ただ、ここにひとつ課題がある。従来の報道媒体や図書館・博物館などが果たしている情報伝達機能とは異なり、インターネットは双方向・多方向の情報システムである。情報源を特定箇所に限定した情報伝達ではなく、インターネット上における情報伝達機能の本質は、いわば参加者持ち寄り型の情報提供行為にある。大多数の人がそうしているように、すでに公開されているWebサイトを検索・閲覧して一方的に情報を受け取るだけでは、情報システムの根幹が徐々に、しかし確実に揺らいでいくのである。一方的に情報伝達を受ける行為を続ける人が多ければ多いほど、この情報システムは旧来の情報伝達媒体と何ら変わらないものになっていく。情報を受け取る人は、情報を享受するだけでなく、他者にとって有益かどうかの判別がつかないような情報であっても、自ら情報を提供するべきである。これが、インターネットを活用する研究者たるものの責務であろう。
現在、インターネット上の考古学関連情報は日々拡充し続けている。自宅や職場に居ながらにして、国内各地の発掘調査状況や博物館等で開催される企画展示の要項を即座に把握できるようになりつつある。ここでは関連するWebサイト、主として日本考古学および埋蔵文化財に関連するWebサイトの整備状況について言及しようと思う。地方自治体、大学などの研究・調査機関、博物館、企業など組織・団体が運営するWebサイト(以下、法人系サイトと記述)の数も、数年前と比較すれば格段に増加した。もちろん、これらの中には非常に有用なサイトも存在する。これらの評価については次稿に譲るとして、本稿においては、個人および少数の有志グループが運営するWebサイト(以下、個人系サイトと記述)の現況についてみていきたい(註1)。
2.個人系Webサイトの分類と機能
個人系サイトの設立意図は各々千差万別であろうが、その設立意図が各々の個人系サイトの方向性に反映している。また、個人系サイトの方向性というものは、管理者の当初の運営方針のみに規定されるとは限らない。管理者以外の利用者の要望・動向によって、サイトの方向性が変更されていく場合とてありうるのである。こうした個人系サイトの性質をふまえて、概ね次のような分類が可能となる(註2)。
- 1類.コンテンツ対象が全国・全時代におよぶ総合網羅的内容のサイト
- 2類.特定地域に限定した内容が主体のサイト
- 3類.特定の時代に限定した内容が主体のサイト
- 4類.特定の遺跡に限定した内容が主体のサイト
- 5類.特定のテーマに限定した内容のサイト
- 6類.情報交換目的に限定して設置されたサイト
なお、上記の6類以外の各類中では、管理者主導型のa型と、情報交換重視型のb型に細分可能である。
この分類に則して個人系サイトを分別していくことは、容易なようで容易でない。なぜならば、個人系サイトは運営上の様々な制約が少なく、管理者の意識変化によってその内容を随時変更可能であると同時に、多方向性の情報システムであるインターネットの利点を存分に活用して利用者の意見を取り入れてサイトの内容や運営方針を随時変えていくことが可能であるからだ。よって、限定的な内容で運用を開始したサイトが、全国・全時代を対象とした総合情報サイトに変貌したり、特定の時代や遺跡に限定した内容のサイトが、その他の要素をどんどん取り入れて多様な内容のサイトへと変貌していったり、1つのサイトが複数の分類基準に該当する性質を兼ね備えたりといった状況も想定される。
このように個人系サイトとは、きわめて柔軟な管理運営を行うことが可能であり、この特徴が個人系サイトの長所であり短所でもあるといえよう。個人系サイトが利用者にとって魅力的かつ有用でありえるためには、柔軟な管理運営を維持し続けることが何よりも大切であり、この一点をもって、多方向性情報システムであるインターネット上において意義のある存在として認められるのである。硬直的な管理運営に陥りがちな法人系サイトとは異なり、個人系サイトに期待されている役割はまさにこの点にある。
では、法人系サイトに期待される役割とは何か。その運営主体は官公庁・地方自治体等や大学等の公的な組織である。その運営主体となっている組織の性質ゆえに、もっとも利用者から期待されているであろう機能は次の2点と考える。
- (1)信頼性の高い情報公開機能
- (2)公的サービスのオンライン提供機能
対して、柔軟な管理運営が可能な個人系サイトが利用者から期待されているであろう機能は次の3点である。
- (1)そのサイトならではの独特の内容開示機能
- (2)高い更新頻度と速報性のある情報提供機能
- (3)情報獲得のための多方向性コミュニケーション機能
もちろん、個人系サイトにおいても正確な情報が要求されていることに違いはないが、利用者側からすれば、法人系サイトと個人系サイトの両方に同種のデータが存在すれば前者に掲載されているデータを参照するのがおそらく実態であろう。よって、個人系サイトでは、情報の正確さを保った上で、そのサイトならではの独特の切り口でその情報を掲載し、かつ頻繁に更新をおこなって情報の鮮度を保つ必要がある。こうした管理が継続的に実行されているサイトの情報は、法人系サイトでは提供することが到底不可能な付加価値をもった有益な情報である。
また、情報の鮮度を維持する点において、掲示板やチャット等の利用者参加型のページが重要な役割を果たしている。情報獲得を目的とした利用者が同時に情報提供者となることで、そのサイトにおける情報の速報性と多様性が維持される。ところが、こうした利用者参加型のサービスは情報交換において有用である反面、心ない利用者による悪戯や特定個人や組織への誹謗中傷が書き込まれる可能性もあり、管理者による日々のチェック作業が必要不可欠である。法人系サイトでこの種のサービスがあまり盛行しない理由は、こうした管理が煩雑で、個々の書き込み内容に対する判断が難しいことに一因があろう。その書き込みを削除すべきか、もしくはその書き込みにどのような回答をすべきかといった基本的な管理作業ひとつにしても、担当職員個人では判断がつかないケースが想定される。掲示板等を設置して細やかなメンテナンスをおこなっているごく一部のサイトを例外として、「触らぬ神に祟り無し」という理由で、法人系サイトでは利用者参加型のページを敬遠しているのかもしれない。
3.盛行する個人系考古学関連Webサイト
では、インターネット上で公開されている個人系Webサイトのうち、考古学関連諸科学に携わる方に是非とも閲覧していただきたいサイトをご紹介する。従来、パソコン・インターネット関連の一般雑誌ではあまり一括して紹介されることがなかったため、ここで列記しておくのもそれなりの意味があるかと思う。以下における記載は1999年9月から10月にかけて実施した閲覧に基づくものである。本稿では、前述の分類基準に従って分類をおこなった結果、複数の分類基準に合致する要素を含むサイトが多いことを確認したが、各個ごとの主要な方向性を重視して分類した。これらのWebサイトは日々更新されているため、本稿をお読みいただいている時点における各サイトの内容が、以下の記載内容に一致しない可能性がある。また、各サイトのURLも執筆時点で確認したものを記載しているので、サイトが別のサーバーに移動した場合は、Web上の検索サイトやリンク集等でご確認いただきたい。さらに、かつて存在していたものの現在はすでに閉鎖された考古学関連サイトもあるように、ここに記載しているすべてのサイトが数年後にも運営されているかどうかは不明であることを付記しておく。
なお、検索サイトやリンク集等に登録されていないWebサイトなども存在するものと思われる。と同時に、サイトの開設準備作業を現在進めている研究者もおられるであろう。よって、本稿の記載は個人系考古学関連サイトを網羅しているものではない。ここで紹介していない個人系サイトにも有益なものがあるとお考えいただきたい。
(1)1類のサイト
1類は日本国内全域を対象とした、もしくは取り扱う地域を限定していない考古学関連情報を掲載しているサイトである。こうしたサイトの情報を常に最新の状態に維持するにはかなりの労力が必要と想定されるためか、1類に分類可能なサイト数は少ない。
考古学関連情報を提供している1a類型に分類されるサイト。取り扱われている情報の対象に、地域や時代等の制限が特に設定されていないため、ここでは1a類型に分類した。[考古学ニュース]では埋蔵文化財発掘情報・博物館等の企画展情報・シンポジウム等の情報が掲載されている。[遺跡紹介]と[考古学ノート]には青森県垂柳遺跡の紹介記事、[文献案内]には主要な考古学関連書籍の刊行情報が記載されている。その他、[リンク集]・[ゲストブック]・[メールマガジン]等のコンテンツがある。サイトの開設日は1999年6月28日。
白井克也氏が運営するサイトで、白井氏ならではの切り口で考古学関連情報を紹介する総合網羅的な考古学サイトとして広く研究者・考古学ファンに支持されている。情報更新頻度が非常に高く、1日100人前後のアクセスを受けている。また、閲覧時の回線接続速度を考慮して、全ページにわたって画像を極力使用せずにテキストを重視し、徹底したデータの軽量化が図られている。主要なコンテンツには、日本国内・東アジアの考古学最新情報を日々掲載する[きまぐれNEWSLINK]、展覧会・書籍・研究会の情報を管理者独特の批評をまじえて紹介する[たぬぼり探偵社]、JISコードに登録されていない考古学常用漢字のリストアップと解説を行う[考古学とのためのe漢字]、考古学関連のコラム[萬維網考古夜話]、管理者の研究活動に伴ってデータが随時追加されていく[韓国考古学文献目録]、管理者の考古学研究の成果が保管・公開されている[かるはずみ文庫]、考古学関連以外の一般的な内容のコラム[今週の発見]などがある。情報交換型のコンテンツには、掲示板[おもいつきボード]、雑記帳的な用途重視のチャット[おやつメイト]、同時会話用途重視のチャット[夜食のとも]、コラム[今週の発見]への投稿ページ[あなたの発見]が用意されている。本稿における分類では1a類型に分類されるが、情報交換型コンテンツも充実しているため、1b類型に移行していく可能性もある。サイトの開設は1998年6月8日。
(2)2類のサイト
2類は特定地域内の考古学関連情報を掲載するサイトであるが、こうした各地域の詳細な関連情報については、発信の必要性が容易に発生しやすいことと、既存の媒体においては広域に伝達することが困難であったこともあり、開設されているサイト数は多い。
群馬県安中市における考古学研究に関する2a類型のサイトであるが、取り扱う内容は保存科学・実験考古学・ランドスケープ アーケオロジーに及ぶため、5a類型的傾向が強い。管理者は吉川裕司氏。現在、コンテンツ内容の再整理中であるためか、新規更新された記事がやや少ないようである。[ANNAKA City,Gunma]では群馬県安中市の遺跡を地区ごとに解説したページのほか、群馬県内で確認されている火山灰層に関するページがある。[Scientific]では遺物の分析方法・保存科学等に関する記事、[Experiment]では実験考古学に関する記事、[Field trip]では群馬県下の博物館の紹介記事、[Press release]では新聞等で報道された考古学関連記事のリスト、[Stamp]では考古資料を絵柄に用いた郵便切手のリストが登録されている。[Gallary]では中野谷松原遺跡の復原画が掲載されている。情報交換型コンテンツには掲示板[Notice Board]とゲストブックがある。
三重県鈴鹿市域の考古学・埋蔵文化財情報を詳細に提供する2a類型のサイトで、考古学関連Webサイトの草分け的存在のひとつである。2000年2月現在、主要コンテンツである「Suzuka考古情報」は公開を休止中であるが、三重県・愛知県・岐阜県下における考古学関連イベント情報を紹介する[東海三県考古学関係催し物ご案内]が登録されている。管理者は藤原秀行氏。サイトの開設は1996年7月9日。
青森県下全域の埋蔵文化財情報を詳細に提供する2a類型のサイト。管理者は相馬信吉氏。大量の記事ページを集合する構成で、蓄積された情報量も膨大である。かつ、情報の更新頻度も高い。現在、[三内丸山遺跡関係]の記事として[三内丸山通信]等16件、[青森の遺跡・報告書の紹介、最新ニュース]に59件、[博物館・現地説明会情報・コレクション・その他]に[青森県博物館情報]等21件が登録されている。[論文]には青森県下の遺跡等に関する考古学研究論文が掲載されている。[各種データベース]には[青森県遺跡台帳]等の埋蔵文化財および考古学に関するデータベースが登録されているほか、[考古図書室]に青森県下の埋蔵文化財発掘調査報告書がHTML形式のファイルで10件収録されている。情報交換型のコンテンツには、ゲストブック用途の[掲示板]と多用途の掲示板[文化財瓦版]が設置されている。サイトの開設は1997年7月3日。
愛媛県松山市域の考古学・埋蔵文化財情報を提供する2a類型のサイト。管理者はOG氏。松山市立考古館・松山市埋蔵文化財センターの紹介のほか、瀬戸内海考古学研究会の開催案内、愛媛大学埋蔵文化財調査室発行の『発掘愛媛大学』のWeb版等が掲載されている。
群馬県周辺地域を対象とした情報を掲示し、かつ情報交換型コンテンツを重視している2b類型のサイトで、考古学関連Webサイトの草分け的存在のひとつである。管理者は矢口裕之氏。現在のコンテンツには、群馬県下の発掘調査情報を紹介する[群馬県の埋蔵文化財の発掘調査の情報]、考古学および関連諸科学に関する知識を群馬県下のデータを用いて解説する[埋蔵文化財学講座]、管理者が訪問した世界の遺跡を紹介する[世界の窓]、陶磁器について解説する[CERAMIC MUSEUM]、群馬県下の埋蔵文化財関連の話題を主体とした掲示板[群馬の埋文談話室]、埋蔵文化財関連以外の話題を主体とした掲示板[黎明会の談話室]、考古学・埋蔵文化財関連のサイトおよび古美術関連のサイトへのリンク集などがある。群馬県下の研究者による掲示板への書き込みも多く、頻繁に閲覧しておきたいサイトである。サイトの開設は1996年5月。
高知県下の遺跡情報を中心に構成されているサイト。情報交換型コンテンツも充実しており、2b類型に分類可能である。管理者は光坊氏。高知県下の縄文遺跡を紹介する[遺跡コーナー]、管理者のもとに寄稿された論考等が掲載されている[寄稿]、管理者の縄文時代研究論文が掲載されている[雑文]、高知県下の遺跡リスト・発掘調査リスト・発掘調査報告書リストが掲載されている[データー]等の主要コンテンツの他、情報交換型コンテンツには、掲示板[伝言板]・チャット[お茶のみ友達または酒のみ友達]・[アンケート]、サイトに送られてきたメールと管理者の回答を掲載する[お便り]等がある。サイトの開設は1999年4月22日。
東京都府中市域の埋蔵文化財情報を発信する2a類型のサイト。管理者は荒井健治氏。府中市遺跡調査会でインターネット上での情報公開が開始されるまでの間、同市域の考古資料の紹介等を行うために運営されている。[講演会・現説・展示会情報]には府中市および周辺地域での考古学・埋蔵文化財関連イベント情報、[探検是政整理事務所]には府中市是政に所在する府中市埋蔵文化財整理事務所の施設・業務紹介、[気になる遺物]には府中市内から出土した主要な遺物の解説、[気になる遺構]には遺跡発掘現場からの速報が掲載されている。その他、武蔵国府を解説する[武蔵国府とは]、府中市域の遺跡紹介[国府前後の府中]、考古学関連図書の紹介[新刊紹介]、東京考古談話会が刊行している情報誌『東京の遺跡』所収記事の一部を収録する[東京の考古学]などのコンテンツがある。サイトの開設は1997年3月3日。
東京都埋蔵文化財センターに関する最新の情報および同センターが調査をおこなったを提供する2a類型のサイト。同センターから公式文書によって公認を受けているこの個人系サイトは、東京都埋蔵文化財センター公式ホームページ(
http://www.tef.or.jp/maibun/)を補完する目的で、東京都埋蔵文化財センター総務課に勤務している野村孝之氏が運営している。更新も頻繁であり、情報量も多い。[講演会会場]では同センターの講演会・遺跡現地説明会などのイベント情報が掲載されている。また、同センターが実施した現地説明会の資料もHTMLファイルとPDFファイルで収録されている。[各遺跡最新展示]では同センターが発掘調査をおこなった遺跡の解説が掲載されている。[展示室]では同センターの展示室の解説、[報告書編集室]では同センターの発掘調査報告書リスト、[映画編集室]では同センターが監修した埋蔵文化財関連の映画リスト、[図書室]では広報誌「たまのよこやま」のHTMLファイルと同センターの研究論集に収録されている論文のリストが掲載されている。サイトの開設は1998年1月15日。
青森県上北郡下田町の埋蔵文化財情報を紹介する2a類型のサイト。管理者は肇氏。下田町域の遺跡解説のほか、[発掘現場速報]等がある。サイトの開設は1998年8月9日。
宮崎県下の考古学・埋蔵文化財情報を中心に構成されている2a類型のサイト。今後の運営方針によっては3a類型的内容が主体となる可能性もある。管理者は、はにまる氏。[発掘調査情報]では宮崎県埋蔵文化財センターと宮崎県文化課が現在発掘調査中の遺跡リストを、[研究会等の案内(1)]では宮崎県内に事務局を置く学会・研究会とその会誌等の紹介を、[研究会等の案内(2)]では九州地方で開催される研究会等の情報を、[資料館・博物館]では宮崎県下の博物館・資料館や埋蔵文化財センターで開催される展覧会・講座等の情報、[弥生クロスロード]では国内各地で開催される弥生文化・弥生時代に関する研究会・企画展示等の情報、[横目で弥生]では国内各地の刊行物に記載されている弥生時代に関するデータのリストを、[勝手に応援団]では管理者の知人がおこなう研究発表や執筆した論文等のリストを掲載している。サイトの開設は1999年8月15日。
福岡市の指定文化財一覧が詳細な解説文とともに掲載されている2a類型のサイト。考古学関連Webサイトの草分け的存在のひとつ。管理者は三木隆行氏。サイトの開設は1996年7月21日。
石川県・福井県・富山県・新潟県の考古学関連情報を紹介する2a類型のサイト。管理者は、とも氏。[北越の遺跡トピックス]では遺跡の紹介記事、[近世考古学へのご招待]では近世考古学関連論文リスト・金沢市立図書館『加越能文庫目録』のHTMLファイル、[北陸近世遺跡研究会]では石川・福井・富山・新潟県の埋蔵文化財調査員や研究者などの有志によって運営されている同研究会の例会発表項目が掲載されている。サイトの開設は1999年3月1日。
大阪府南河内地域に限定した考古学・埋蔵文化財情報を提供する2b類型のサイトであるが、情報交換型コンテンツ群が当該サイトの主体となりつつあるため、実態は6類的な性格が強い。私、植田が拙い管理をおこなっているサイトである。[文化財図書情報]では当該地域内で刊行された書籍のリストを、[文化財イベント情報]では同地域で実施される文化財関連イベント情報を、[文化財情報]では同地域の文化財関連情報を市町村域ごとに紹介している。その他、リンク集[考古学・文化財関連サイト]、拙稿や関連資料およびJISコードに登録されていない考古学常用漢字のブラウザー表示用画像を収録した[書庫]、コラム[管理人覚書]等がある。情報交換型コンテンツにはゲストブック[受付]、考古学・文化財関連情報広報用掲示板[情報掲示板]、考古学関連の話題専用の掲示板[喫茶室]、博物館事業関連の話題専用の掲示板[博物館準備室]、雑多な用途の掲示板[雑記帳]、リンク登録型掲示板[リンク掲示板]、複数のチャットプログラムで構成するチャット[待合室]がある。サイトの開設は1996年11月10日。
宮崎県下の考古学関連情報を提供する2a類型のサイト。管理者は島岡武氏。[後牟田遺跡発掘調査情報]では同遺跡の出土遺物等の紹介、[宮崎の考古情報]では宮崎県下の遺跡調査情報や研究会・講演会・企画展示の情報、[川南町]では宮崎県児湯郡川南町の紹介が掲載されている。情報交換型コンテンツには[モグラの掲示板]と[ゲストブック]がある。サイトの開設は1999年7月6日。
八ヶ岳山麓の旧石器文化の解明を目的に1990年に結成された、八ヶ岳旧石器研究グループのサイトで2a類型に分類される。管理は同グループでおこなわれている。[八ヶ岳旧石器遺跡探訪]では八ヶ岳野辺山高原にある旧石器時代の遺跡を紹介、[八ヶ岳の自然]では八ヶ岳山麓の動植物等を紹介、[八ヶ岳山麓の旧石器]では同地における後期旧石器時代の石器編年を解説、[黒曜石の謎]では黒曜石の原産地に関する問題を紹介、[発見の八ヶ岳]では同地の旧石器研究史を解説、[八ヶ岳ファミリーページ]では八ヶ岳旧石器研究グループの活動履歴等を紹介している。[八ヶ岳ミュージアムショップ]には同グループが刊行している報告書・研究論集・資料集等のリストがあり、電子メールで発注可能である。
(3)3類のサイト
3類は特定の時代に関する情報を掲載するサイトである。各時代の研究者および研究会が運営している数例のサイトが確認される。
縄文時代研究に関する内容を主体としている3a類型のサイト。管理者はFuru氏。サイト名「生活面」と同じく、各コンテンツを土層名のように表記している。[表土]は掲示板で、[撹乱層]はコラム等を掲載、[第1層 東北町の遺跡と発掘調査]は青森県上北郡東北町の発掘現場の調査日誌や同町の遺跡台帳・遺跡分布図を掲載、[第2層 長老たちの部屋]は考古学および考古学関連外のコラム等を掲載、[間層]は縄文時代の考古資料を紹介、[第3層]は環状列石の比較方法を管理者が提示するモデルに基づいて解説、[第4層 縄文時代の「ものさし」]は縄文時代の定規と推測されている茨城県取手市中妻貝塚出土の骨角器を根拠とする「縄文時代の尺度一覧表」を掲載している。その他、[第5層 ウルの縄文物語]、リンク集[第6層]、管理者個人の考古学関連外の記載[地山]がある。サイトの開設は1998年9月9日。
福岡旧石器文化研究会のサイト。管理者は吉留秀敏氏。旧石器時代研究に関する内容がこのサイトの主体と考えられるため3a類型に分類されるが、九州地方の考古学情報も充実しており、2a類型的な性格も併せ持つ。情報更新頻度も高い。旧石器時代研究に関するコンテンツにはコラム[岩宿50周年企画 九州旧石器の狩人たち]、福岡旧石器文化研究会にかかわるイベント情報や旧石器時代遺跡の発掘調査等の案内を記載する[福岡旧石器文化研究会からの知らせ]のほか、同研究会の連絡誌の「ハカタントロプス・ニュース」のバックナンバーを収録しているページがある。2a類的なコンテンツとしては、九州を中心とした考古学関係の催し物の情報を掲載する[各地の展示会・研究会・シンポジウムなどのお知らせ]、宮崎県下のイベント・研究会情報を記載する[宮崎考古通信]がある。また、考古学関連およびその他の話題を綴ったコラム[筑紫原人ノート]は管理者の意見がよく表れている。その他のコンテンツには、リンク集[お猿のリンク室]、掲示板[お猿の伝言板]がある。サイトの開設は1998年12月6日。
北陸古代土器研究会のサイトで、3a類型に分類される。管理者は柿田祐司氏。[例会案内]には同研究会の例会実施案内、[北陸古代土器研究バックナンバー]には同研究会の機関誌リスト、[例会報告]には例会実施報告がが掲載されている。情報交換型コンテンツとして掲示板[古代土器BBS]が設置されている。
奈良県内の弥生遺跡に関心を持つ埋蔵文化財関係者で構成される大和弥生文化の会のサイト。3a類型。サイトの管理運営は会員共同でなされているようである。会の活動概要が紹介されているほか、[会誌『みずほ』]には機関誌のバックナンバーリスト、[県内の弥生遺跡]には奈良県内の主要遺跡リスト、[県内の考古展示施設]には奈良県内の考古関連展示施設のリスト、[県内の弥生情報]には同会の例会案内と奈良県内の弥生時代に関連するイベントの情報および、弥生時代の遺跡発掘調査情報が掲載されている。情報交換型コンテンツとして掲示板[オンラインみずほ]が設置されている。サイトの開設は1999年4月6日。
(4)4類のサイト
4類は特定の遺跡に関する情報掲載が主要コンテンツとなっているサイトである。
広島県福山市に所在する草戸千軒町遺跡の発掘調査および研究成果を解説する4a類型のサイトで、考古学関連Webサイトの草分け的存在のひとつである。管理者は鈴木康之氏。[草戸千軒とは]では約30年の長期間にわたって実施された草戸千軒町遺跡の発掘調査の概要を含む、同遺跡の詳細な情報が解説されている。[広島県立歴史博物館]では同博物館の学芸員である管理者ならではの読み応えのある詳細な常設展示解説と、博物館の行事案内が掲載されている。サイトの開設は1996年10月10日。
(5)5類のサイト
5類は特定のテーマに限定した内容のサイトである。特定の課題について考察を重ねるために設置されたもの、研究成果を公開するために設置されたものなどがこれに相当する。
管理者である河内一浩氏が執筆した研究論文や資料紹介文等を掲載する5a類型のサイト。[企画展示室]では鍵と錠前に関する解説、[日本の化粧文化]では日本の化粧史とその道具に関する解説、[資料室]では管理者の著作論文等が掲載されている。[売店]では摂河泉古代寺院研究会・摂河泉文庫刊行の書籍を実費にて頒布しており、電子メールでの発注が可能である。サイトの開設は1997年12月24日。
高校生である管理者Nakamura Kousaku氏が、縄文学に関する個人的な意見の発表と、文化財の保存普及について考えるために運営する5a類型のサイト。埋蔵文化財行政に関する法令・通知などをとりまとめた[埋蔵文化財関連法令集]、神奈川県伊勢原市の指定文化財一覧を掲載した[いせはら文化財]、同市域の縄文時代の遺跡を紹介する[いせはらの縄文遺跡]などがある。サイトの開設は1999年1月20日。
管理者窪田輝久氏が関心をもつ考古学関連情報を集積する5a類型のサイト。[橿原考古学研究所のご案内]では奈良県立橿原考古学研究所の発掘調査情報・刊行図書の情報・同研究所附属博物館の企画展示情報等を掲載、[奈良県内市町村埋蔵文化財技術担当者連絡協議会の情報PAGE]では同会に加入している奈良県下の市町村ごとに、発掘調査リスト・発掘調査報告書リスト・遺跡紹介等を掲載、[歴史・考古学関係の古典書籍・雑誌の紹介]では1960年代以前の歴史学・考古学関係の書籍・雑誌についての情報をとりまとめ、[歴史・考古学関係の研究会紹介]では窪田氏が関わっている研究会の諸情報を紹介している。サイトの開設は1998年2月27日。
日本考古学の情報化・電子化をすすめる上で必要となる関連情報をとりまとめた5a類のサイト。管理者は水山昭宏氏。発掘調査報告書等の考古学・埋蔵文化財関連データをデジタル化することの利点およびその方法について詳細に解説している。また2a類型的なコンテンツに[東京遺跡情報2000]があり、都内の考古学関連イベント情報・東京23区内の遺跡リスト・都内の考古学関連展示のある博物館および資料館の紹介等が掲載されている。サイトの開設は1999年3月15日。
遺跡鳥取県西伯郡に所在する妻木晩田遺跡の保存活動の中核をなしているサイト。管理者は佐古和枝氏。[山陰の考古学ニュース速報]には島根県下の考古学関連報道記事と妻木晩田遺跡の保存に関する報道記事が、[妻木晩田遺跡と保存・活用の動き]には妻木晩田遺跡の概要解説のほか、同遺跡の保存運動活動の報告や紹介が掲載されている。情報交換型コンテンツとして掲示板[みんなで考古学 掲示板]がある。サイトの開設は1997年10月18日。
(6)6類のサイト
6類はサイト利用者間の情報交換のみに機能を限定したサイトである。
【arc-net】URL http://www.netlaputa.ne.jp/%7Eha2-labo/millor/arc-net/
(※補註:2001年1月現在のURLは、http://arc-net.vo.to/)齋藤学氏・森谷直人氏・鬼塚知典氏・堀江隆之氏で共同運営されているサイトで、考古学関連の情報交換に特化しているのが特徴である。6類に分類される。考古学・埋蔵文化財関連の話題を主体とした掲示板「FLASH BBS」、テーマ提起型の掲示板「FORUM BBS」、登録型URL検索ページ「LINK ENGINE」などの情報交換型コンテンツを本来は常設しているが、2000年4月現在の運営は仮設サイトでおこなわれており、コンテンツは催し物案内等を記載したメールマガジンの配信のみとなっている。(上記のURLは今後変更される可能性が高いので注意が必要である。)
6.まとめにかえて
一時期に較べればインターネット接続環境がかなり改善されてきたため、インターネットを利用して情報を収集する考古学関連諸科学の研究者の数は増えてきているであろう。だが、私の身の回りを見るかぎり、「インターネットにアクセスすることが自分の研究の何に役立つか判断できない」という理由で、自分のパソコンをインターネット接続していない人が多い。おそらく、インターネット接続環境を確立している研究者の数が、研究者総数に占める比率はまだまだ少ないのではなかろうか。
しかし、こうした状況はいずれ変化していくであろう。各研究者が自分のサイトもしくは他者が管理するサイトにおいて、各自の研究成果を発表するケースが増加すれば、多くの研究者はWeb上のその著作を閲覧したいと感じるであろう。まして、その多くが学術雑誌等の紙上に掲載されることがないという事態になればなおさらであろう。また、個人系サイトの掲示板等で、研究者間の議論が活発に交わされるようになれば、シンポジウムや研究会に出席するのと同じように、多くの研究者がこの掲示板を閲覧し、場合によっては発言したいと思うようになるであろう。
考古学関連の個人系Webサイトの数は、今後ますます増加していくものと思われる。そこに蓄積・公開されていく情報の質と量が、考古学研究活動のオンライン化と考古学情報のデジタル化の度合いを示す指標となっていくであろう。
註- 法人系サイトであるか個人系サイトであるかの峻別が難しい例が存在する。組織・団体の公式Webサイトを個人で運営可能な場合がこれにあたる。実例としては、各種研究会や資料館等のサイトのいくつかを挙げうる。本稿では、特定個人のサイト管理者が業務外において随意に管理・運営に携わっていると明瞭に判断されるものについては個人系サイトと判断し、それ以外のものについては法人系サイトと判断した。また、各大学のサーバ内にある研究室のサイトについては個人色の強い物であっても、便宜上、法人系サイトとして扱った。
- 考古学関連Webサイトの分類については、吉留秀敏氏が[ハカタントロプス 筑紫原人](http://www2u.biglobe.ne.jp/~thropus/hakatanthropus.htm)の[筑紫原人ノート]の中で「考古学関連HP様式論はやれるのか」と題する考察をおこなっておられる。
top of this page
※当文書は『情報 祭祀考古』第16・17号合併号(2000年3月31日、祭祀考古学会発行)所収の評論文である。
HTML版作成に際して、URL変更などの重要事項については括弧書きの補註を付した。
HTML版公開:2001年1月23日